「そろそろリニューアルしたほうがいいのだろうか」
制作から数年経つと、必ず出てくる問いです。しかしリニューアルは数十万円から数百万円の投資であり、しかも作り直せば成果が出るとは限りません。デザインを新しくしただけで問い合わせが増えることは、ほとんどありません。
この記事では、リニューアルすべきか、部分改修で足りるかを判断するための基準を示します。
この記事で分かること
- リニューアルが必要な状態と、部分改修で足りる状態の見分け方
- 20項目の判断チェックリスト
- やってはいけないリニューアル
- 着手前に必ず記録しておくべきデータ
「何年で作り直すか」ではない
「ホームページの寿命は3〜5年」とよく言われます。目安としては間違っていませんが、年数で判断するのは本質的ではありません。
5年前のサイトでも、更新され続け、スマートフォンで問題なく見られ、問い合わせが取れているなら、作り直す理由はありません。逆に2年前のサイトでも、自社で更新できず情報が古いままなら、既に機能していません。
判断すべきは、「今の課題は、部分改修で解決できるか」の一点です。
リニューアルが必要な5つのサイン
1|自社で更新できない
CMSが入っていない、または更新可能な範囲が極端に狭い。お知らせ1本の掲載に費用が発生する状態は、構造的な問題です。部分改修では解決できません。
2|スマートフォンに対応していない
多くの業種でアクセスの半数以上がスマートフォンです。PC専用の設計を後から対応させるのは、作り直すのと変わらない工数がかかります。
3|事業内容と、サイトの内容が乖離している
主力サービスが変わった、ターゲットが変わった、事業を統合した——この場合、ページを足すのではなく構造から見直すべきです。継ぎ足しを重ねたサイトは、訪問者にとって分かりにくくなります。
4|システムが古く、セキュリティ上のリスクがある
WordPressやPHPが古いまま更新できない、使用中のプラグインが開発終了している。更新すると壊れるため止めている、という状態は改ざんリスクを抱えたままです。
5|制作会社と連絡が取れない/管理情報が不明
手を入れられない状態です。まずは管理情報の調査が先ですが、結果によってはリニューアルが最短の解決策になります。調査手順はドメイン・サーバーの管理情報が分からないときの調査手順をご覧ください。
判断チェックリスト
該当する項目を数えてください。
A|構造の問題(1つでも該当すればリニューアル検討)
- CMSが入っておらず、自社で更新できない
- スマートフォンで表示が崩れる
- WordPressやPHPを更新できない状態が続いている
- 主力事業とサイトの内容が合っていない
- SSL化されていない
- 管理情報が不明で、手を入れられない
B|内容の問題(部分改修で対応可能なことが多い)
- 料金の目安が書かれていない
- 実績・事例が載っていない、または古い
- お知らせの最終更新が1年以上前
- 写真が古く、実態と合っていない
- 問い合わせ導線が弱い
- サービス内容の説明が不十分
- 地域名が入っていない
C|見え方の問題(優先度は低い)
- デザインが古く感じる
- 競合他社のサイトのほうが見栄えがよい
- 社内で「そろそろ古い」という声がある
- 表示速度が遅い
- ロゴやブランドカラーを変更した
- アクセシビリティへの配慮がない
- 他社と似たテンプレートに見える
判定
| 状況 | 判断 |
|---|---|
| Aに1つでも該当 | リニューアルを検討。構造の問題は部分改修で解決できない |
| Aは該当なし、Bが3つ以上 | 部分改修から着手。効果を見てから判断 |
| Aは該当なし、Cのみ | 急がない。まずBの改善に投資するほうが効果的 |
Cだけを理由にしたリニューアルは、費用対効果が最も低くなります。「見栄えが古い」という社内の声は、必ずしも訪問者の判断とは一致しません。
部分改修で足りるケース
| 課題 | 部分改修の内容 | 費用の目安 |
|---|---|---|
| 問い合わせが少ない | 料金ページの追加、導線の設置、フォーム改善 | 5万〜30万円 |
| 実績が古い | 事例ページの追加、更新できる仕組みの導入 | 10万〜30万円 |
| 地域検索で出てこない | 対応エリアページの追加、既存ページの改善 | 10万〜30万円 |
| 表示が遅い | 画像圧縮、不要プラグインの整理 | 5万〜20万円 |
| 採用に使いたい | 採用ページ群の追加 | 30万〜80万円 |
全面リニューアルが80万〜200万円かかることを考えれば、まず部分改修で効果を確かめるほうが合理的です。改善して数字が動けば、次の投資判断もしやすくなります。
どこを直すべきかの特定には、問い合わせが来ない原因診断が役立ちます。
やってはいけないリニューアル
1|目的を決めずに始める
「そろそろ古いから」だけで始めたリニューアルは、デザインの好みの議論に終始し、成果につながりません。問い合わせを増やすのか、採用に使うのか、目的を1つに絞ってください。
2|現状のデータを見ずに全面刷新する
アクセス解析を見ずに作り直すと、成果を出していたページまで壊します。「実は特定の記事に検索流入が集中していた」ということは珍しくありません。データを見ずに全面刷新を提案する制作会社には注意してください。
3|リダイレクト設計をしない
URLが変わるページについて、旧URLから新URLへの転送(301リダイレクト)を設定しないと、これまで積み上げた検索評価が失われます。これはリニューアル最大の事故です。
見積もり段階で「リダイレクトの一覧表を作成しますか」と必ず質問してください。
4|ページ数を減らしすぎる
「情報を整理してすっきりさせる」という方針で、既存ページを大幅に削るケースがあります。削ったページに検索流入があった場合、その分がそのまま失われます。削除の前に、必ずページごとのアクセス数を確認してください。
5|また更新できないサイトを作る
更新できないことが課題でリニューアルしたのに、新しいサイトも一部しか更新できない——実際に起こります。「どのページの、どの部分を、自社で更新できるようにするか」を要件として明示してください。
着手前に必ず記録すること
リニューアルの効果を測るには、「前」のデータが必要です。作り直してから「前はどうだったか」を調べても手遅れです。
| 記録すること | 取得元 |
|---|---|
| 月間セッション数(直近12か月) | Googleアナリティクス |
| ページ別のアクセス数 | Googleアナリティクス。削除判断の根拠になる |
| 流入経路の内訳(検索・直接・SNS・広告) | Googleアナリティクス |
| 問い合わせ件数(月別) | フォームの記録、社内の受付記録 |
| 検索順位の高いキーワード | Search Console |
| 全ページのURL一覧 | サイトマップ、またはクロールツール |
| 外部からリンクされているページ | Search Console |
アナリティクスやSearch Consoleを導入していない場合は、今すぐ設定してください。データが貯まるまで数か月かかるため、リニューアルを決めた時点で着手するのが理想です。設定方法はGA4・Search Consoleの初期設定と見るべき指標で解説しています。
費用と期間
| 規模 | 費用 | 期間 |
|---|---|---|
| 小規模(〜10ページ) | 40万〜100万円 | 2〜3か月 |
| 中規模(15〜30ページ) | 100万〜250万円 | 3〜5か月 |
| 大規模(30ページ以上) | 250万円〜 | 5か月〜 |
リニューアルは新規制作の70〜100%の費用がかかります。「既にサイトがあるから安く済む」とは考えないでください。現行サイトの調査、コンテンツ移行、リダイレクト設計という、新規にはない工程が加わります。
費用の内訳はホームページ制作費用の相場、進め方は制作の流れと期間の目安をご覧ください。
よくある質問
Q. リニューアルすれば問い合わせは増えますか?
原因を特定しないままでは増えません。「見られていない」のか「見られているが動かない」のかを切り分けてから、それを解決する設計にすることが前提です。デザイン刷新だけでは変わりません。
Q. 記事コンテンツはすべて移すべきですか?
アクセスのあるものは必ず移してください。アクセスがゼロの記事は、移さずにリダイレクトで関連ページへ転送するという判断もあります。件数が多いと移行費用がかさむため、データを見て取捨選択してください。
Q. URLは変えないほうがよいですか?
変えないのが最も安全です。変える必要があるなら、必ず301リダイレクトを設定してください。ドメイン自体を変える場合はさらに影響が大きいため、よほどの理由がない限り避けるべきです。
Q. 公開後、どのくらいで効果が分かりますか?
検索流入は3〜6か月かけて落ち着きます。公開直後は一時的に順位が下がることもありますが、正しくリダイレクトされていれば回復します。1か月で判断しないでください。
まとめ
- 判断基準は年数ではなく「部分改修で解決できるか」
- 更新できない・スマホ非対応・更新できないシステムは構造の問題
- 「デザインが古い」だけの理由なら急がない
- 着手前にページ別アクセス数と検索順位を必ず記録する
- 301リダイレクトの一覧表を作るか、見積もり時に確認する
- 費用は新規制作の70〜100%かかる
リニューアルは手段であって目的ではありません。何を解決したいのかを1つに絞ることが、成否を分けます。
