ホームページ制作の契約・著作権・検収の実務|追加費用でもめないための確認事項

ホームページ制作でトラブルになるのは、たいてい制作の終盤です。「これは追加費用です」「聞いていない」「まだ完成していない」——このやり取りが起きる原因は、ほぼ例外なく契約時に決めていなかったことにあります。

金額の大小にかかわらず、業務委託契約書は必ず交わしてください。契約書がなければ、検収の基準も、修正の範囲も、著作権の帰属も、すべて「言った・言わない」になります。

この記事では、発注側が契約前に確認すべき論点を実務目線で整理します。

この記事で分かること

  • 業務委託契約書で必ず確認する8つの条項
  • 著作権の帰属と、「利用許諾」との違い
  • 写真・フォント・テーマなど、素材ごとの権利の扱い
  • 追加費用が発生する典型的なケース

※本記事は一般的な実務の解説であり、法的助言ではありません。個別の契約内容についての判断は、弁護士にご相談ください。

目次

契約書を交わさないと何が起きるか

発注書と請書だけで進めるケース、あるいはメールのやり取りだけで着手するケースがあります。実際に起きるのは次のような事態です。

  • いつまでも完成しない:検収の基準がないため、修正の要求に終わりがない
  • 公開後に追加請求が来る:どこまでが見積もりの範囲だったか証明できない
  • 他社に引き継げない:デザインデータやソースコードの権利関係が不明
  • 制作会社と連絡が取れなくなる:責任の所在も、賠償の範囲も定まっていない

契約書は制作会社を縛るためのものではありません。双方が同じ前提で仕事を進めるための共通認識の文書です。契約書の提示を渋る会社は、その時点で候補から外して構いません。

業務委託契約書で確認する8つの条項

1. 業務の範囲

契約書本文で「ホームページ制作一式」とだけ書かれている場合、範囲は見積書や仕様書で特定します。それらの書面が契約書の一部を構成する旨が書かれているかを確認してください。

あわせて、範囲外の作業も明示しておくと安全です。原稿執筆、写真撮影、既存データの移行、公開後の運用サポートなど、どちらが担うのか曖昧になりやすい項目を書き出します。

2. 検収の定義

「何をもって完成とするか」を定める、最重要の条項です。ここが曖昧だと、制作会社は納品したつもり、発注側はまだ途中、という認識のずれが生じます。

確認すべきは次の3点です。

  • 検収期間:納品から何日以内に確認するか(7〜14日が一般的)
  • みなし検収:期間内に連絡しなければ検収完了とみなす条項があるか
  • 検収後の不具合:いつまで無償で対応してもらえるか(契約不適合責任の期間)

みなし検収の条項は珍しくありません。社内確認に時間がかかる体制なら、検収期間を長めに設定してもらってください。決裁者が出張中で確認できないまま期限が過ぎた、ということが実際に起こります。

3. 修正回数と、その定義

「デザイン修正3回まで」と書かれていても、何を1回と数えるのかが定まっていないと揉めます。

一般的には「フィードバックをまとめて1回」と数えますが、思いつくたびに小出しに送れば、それぞれが1回とカウントされることもあります。社内の意見を取りまとめてから渡すのが、回数を無駄にしない方法です。

また、「軽微な文言修正は回数に含めない」といった運用をしている会社もあります。基準を確認しておいてください。

4. 追加費用が発生する条件

後述しますが、この条項では「追加作業が発生する場合は、事前に書面で見積もりを提示し、合意のうえで着手する」という手続きが定められているかを確認します。

この一文がないと、作業後に請求書が届いて初めて追加費用の存在を知る、という事態が起こり得ます。

5. 著作権の帰属

次章で詳しく扱いますが、契約書では「いつ」権利が移転するのかも確認してください。「代金の完済をもって移転する」と定められているのが一般的です。

6. 再委託の可否

制作会社が作業の一部を外部に委託することがあります。それ自体は一般的な商習慣ですが、再委託先の管理責任が制作会社にあることを確認してください。また、機密性の高い情報を扱う場合は、事前承諾を要する条件にしておくと安心です。

7. 秘密保持

制作過程では、未公開の事業計画や顧客情報を渡すことがあります。秘密保持条項があるか、契約終了後も何年間有効かを確認します。

あわせて「実績として公開してよいか」も決めておいてください。制作会社は実績をサイトに掲載したいのが通常です。公開してよいか、公開時期はいつからか、社名を出してよいかを、契約時に取り決めます。

8. 中途解約と解除

制作の途中で中止する場合の精算方法を確認します。「着手済みの工程までの実費を精算する」といった定めが一般的です。

保守契約については、最低契約期間と解約予告期間を必ず確認してください。「1年契約の自動更新、解約は3か月前までに通知」といった条件だと、乗り換えたいときにすぐには動けません。

著作権はどちらに帰属するのか

ここは誤解が多い領域です。順に整理します。

原則:制作した側に発生する

著作権は、作った人に自動的に発生します。費用を支払ったからといって、当然に発注側のものになるわけではありません。発注側に移転させたい場合は、契約書で明示的に定める必要があります。

「権利の譲渡」と「利用許諾」は違う

著作権の譲渡利用許諾(ライセンス)
権利者発注側制作会社のまま
自由に改変できるかできる許諾の範囲による
他社に引き継げるかできる許諾の範囲による
制作会社が他案件へ流用できないできる場合がある

実務上、著作権が制作会社に残る契約自体は珍しくありません。問題になるのは、その場合に発注側ができることが限定されてしまう点です。

最低限、次の3点が確保されているかを確認してください。

  • 納品物を自社の事業のために自由に利用できる
  • 納品物を改変できる(将来のリニューアルで必要になります)
  • 納品物を他社に引き継げる(乗り換え時に必要になります)

「著作権は当社に帰属」という条項があっても、この3点が別途認められていれば実務上の支障は小さくなります。権利の所在そのものより、自社が何をできるかを確認してください。

著作者人格権の不行使

著作権を譲渡しても、著作者人格権は譲渡できません。これには、作品を勝手に改変されない権利(同一性保持権)などが含まれます。

そのため契約書では「著作者人格権を行使しない」という条項を置くのが一般的です。この一文がないと、将来サイトを改変する際に理屈のうえでは制約が残ります。

素材ごとの権利は別々に確認する

「サイトの著作権は発注側に帰属」となっていても、サイトを構成する素材のすべてが自社のものになるわけではありません。

素材確認すること
ストックフォト・イラストライセンスの範囲。誰の名義で購入したか。リニューアル後も使えるか
Webフォント年額課金のものが多い。契約者は誰か、更新は誰が行うか
有料WordPressテーマライセンスの範囲と、購入名義。テーマによって規約が異なる
有料プラグインライセンスキーの名義。更新が切れると機能が止まるものがある
撮影した写真カメラマンとの取り決め。用途がWeb限定か、印刷物にも使えるか
被写体(社員・顧客)肖像権。退職後も掲載してよいかを撮影時に取り決めておく

特に見落とされやすいのが、有料テーマ・プラグインの購入名義です。制作会社名義で購入されていると、乗り換え後にライセンス更新ができなくなります。サーバー・ドメインと同じく、可能な限り自社名義で契約してください。この考え方はなぜサーバー・ドメインは「お客様名義」で契約すべきかと同じです。

テーマのライセンス条件は製品ごとに異なります。当社が多く扱っているSWELLについてはSWELLのライセンス・利用規約についてで詳しく解説しています。

社員の写真については、退職後の扱いを撮影時に書面で取り決めておいてください。「退職したので写真を消してほしい」という要望は実際に発生します。

納品物として何を受け取るか

権利の話と並んで重要なのが、実際に手元に残るものです。権利があってもデータがなければ、次の会社は作業できません。

納品物なぜ必要か
サーバー上の一式(またはバックアップ)移転や復旧の起点になる
デザインデータ将来の改修や、印刷物との連動で使う
使用素材の一覧とライセンス情報権利関係を後から追える状態にしておく
各種アカウント情報サーバー、ドメイン、CMS管理者、解析ツール
操作マニュアル担当者が交代したときに引き継げる

アカウント情報は、公開時に必ず一覧でもらってください。「前任者が退職して、サーバーの管理画面に入れない」という相談は本当に多く、この一覧があるかどうかで、その後の対応コストがまったく変わります。

追加費用が発生する典型的なケース

ケース回避のしかた
デザイン確定後にページを追加したページ構成は設計工程で確定させる。将来の追加予定は事前に伝える
無償の修正回数を超えた社内の意見を取りまとめてから一度に渡す
原稿が大幅に変わり、レイアウトをやり直した原稿の方向性は設計段階で握る
「お客様支給」の原稿を結局書いてもらった書ける体制があるか、着手前に見積もる
公開後に軽微な修正を都度依頼した保守契約に含まれる件数・時間を確認する
公開日に間に合わせるため特急対応になったスケジュールに余裕を持たせる
サーバー移転やメール設定が範囲外だった見積もり時に「範囲外の作業」を質問しておく

いずれも、見積もり段階で「この見積もりの範囲外になる作業を教えてください」と一言聞いておけば、大半は事前に把握できます。この質問の効果については相見積もりの取り方と見積書の読み方で詳しく触れています。

契約前チェックリスト

  • 見積書・仕様書が契約書の一部を構成すると書かれているか
  • 検収期間と、みなし検収の条項を確認したか
  • 無償の修正回数と、その数え方を確認したか
  • 追加作業は事前見積もり・合意のうえで着手する手続きになっているか
  • 納品物を利用・改変・他社へ引き継ぎできることが担保されているか
  • 著作者人格権の不行使が定められているか
  • 有料テーマ・プラグイン・素材の購入名義は自社か
  • サーバー・ドメインは自社名義で契約するか
  • アカウント情報の一覧を納品物に含めているか
  • 実績としての公開可否・時期を取り決めたか
  • 保守契約の最低期間と解約予告期間を確認したか
  • 社員写真の、退職後の扱いを決めたか

よくある質問

Q. 制作会社から提示された契約書を、そのまま受け入れてよいですか?

ひな形は制作会社側に有利に作られているのが通常です。不利な条項があれば修正を申し入れて構いません。特に検収の定義、著作権、解約条件は交渉の余地があります。金額が大きい場合は、弁護士に確認してもらうことをおすすめします。

Q. 収入印紙は必要ですか?

契約の類型と金額によって扱いが異なります。電子契約であれば印紙税は課されないという整理が一般的です。具体的な判断は税理士にご確認ください。

Q. 公開後に不具合が見つかりました。無償で直してもらえますか?

契約不適合責任の期間内であれば、原則として無償対応の対象です。期間は契約書で定められており、数か月から1年程度が一般的です。ただし「仕様どおりに作られているが、期待と違う」というケースは不具合ではなく、修正依頼として有償になります。

Q. 制作会社が廃業した場合、サイトはどうなりますか?

サーバー・ドメインが自社名義で、データとアカウント情報が手元にあれば、別の会社に引き継げます。逆に制作会社名義で契約されていると、連絡が取れなくなった時点で身動きが取れません。この一点だけでも、名義を自社にしておく価値があります。

Q. 「著作権は当社に帰属します」と言われました。断るべきですか?

必ずしも断る必要はありません。実務では珍しくない条件です。重要なのは、自社が納品物を自由に利用・改変・引き継ぎできるかどうかです。その3点が別途認められるなら、実務上の支障は限定的です。認められない場合は、理由を確認してください。

まとめ

  • 金額の大小にかかわらず業務委託契約書を交わす。渋る会社は候補から外す
  • 最重要は検収の定義。何をもって完成とするかを決めておく
  • 著作権は作った側に発生する。移転させるには契約書での明示が必要
  • 権利の所在より、利用・改変・引き継ぎができるかを確認する
  • テーマ・プラグイン・素材の購入名義と、アカウント情報の一覧を必ず受け取る

契約内容は制作会社の姿勢がもっとも表れる部分です。質問に対して書面で丁寧に回答してくれるかどうかも、判断材料にしてください。会社選びの観点はホームページ制作会社の選び方にまとめています。

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