ホームページ制作を契約する前に、作る範囲、納品するデータ、確認の方法、公開後に自社や別の会社ができることを揃えます。「制作一式」「著作権は譲渡」といった短い表記だけでは、原稿作成や将来の改修まで含まれるか判断できません。
契約書、見積書、仕様書のどこに条件が書かれているかを確認し、書面間で内容が違う場合の優先順位も決めます。この記事では、発注担当者が確認する項目と記入例を整理します。個別条項の法的な効力や争いの判断は、契約の全体と事情を踏まえて専門家へ確認してください。
制作契約で決める作業と担当
ページ数に加え、異なる画面の型、機能、素材、移行する件数を確認します。会議で合意した変更も、後から見返せる記録に残します。
| 項目 | 合意する内容 | 確認する資料 |
|---|---|---|
| 業務の範囲 | 構成・デザイン・実装・移行・公開の対象と除外作業 | ページ一覧、機能一覧、見積明細 |
| 発注側の準備 | 原稿・写真・素材の権利確認と提出期限 | 支給物一覧、制作日程 |
| 金額・支払い | 税区分、支払時期、追加作業の合意方法 | 見積書、支払条件 |
| 納期・確認 | 中間確認、納品、検収、公開の日程と担当者 | 工程表、確認項目 |
| 修正と変更 | 仕様内の修正と追加要望、回数の数え方 | 修正条件、変更依頼の記録 |
| 再委託・秘密保持 | 情報を渡す相手と範囲、再委託の条件 | 契約条項、管理体制 |
| 中止・解約 | 途中成果物、精算方法、契約終了後の協力 | 解約条件、引き継ぎ条件 |
| 実績への掲載 | 社名・画面・成果の公開可否と時期 | 掲載許可の記録 |
条件の整理には提案依頼書の書き方、金額の比較には相見積もりの取り方を使えます。
納品・検収・公開を別々に確認する
納品は成果物を受け取ること、検収は合意した条件に適合するか確認すること、公開は利用者が見られる状態へ切り替えることです。公開日と検収日を同じにするかも含め、契約で決めます。検収の期限を「業界では何日」と一律に決めず、社内で確認できる日程と対象に合わせます。
| 確認対象 | 確認方法の例 | 記録すること |
|---|---|---|
| ページ・機能 | 合意した一覧と照合し、対象ブラウザーで確認 | 対象URL、仕様、結果、未対応事項 |
| フォーム | 承認したテスト手順で入力・通知・記録を確認 | 送信先、受信、エラー、テスト記録の扱い |
| 更新機能 | 社内担当者の権限で下書き・プレビュー・公開を試す | 編集項目、操作方法、必要な権限 |
| データ・権限 | 納品物の一覧と実際に使える状態を照合 | ファイル形式、アカウント所有者、受領日 |
一定期間連絡しなければ検収完了と扱う条項がある場合は、期限の起点、通知方法、未対応事項があるときの扱いを確認します。確認しきれないまま期限を迎えそうなら、期限前に未確認の範囲と対応日程を共有します。
公開後の不具合対応は、対象・期間・連絡方法・除外条件を確認します。合意した仕様との不一致、追加要望、外部サービスや更新による変更を区別し、契約不適合への対応と保守サービスを混同しないようにします。無償対応の可否を、期間内という理由だけで断定しません。
著作権の譲渡と利用許諾を分ける
制作代金の支払いだけで、すべての著作権が発注側へ移るとは限りません。譲渡する権利、許諾する利用方法、対象となる成果物、効力が生じる時点を契約で確認します。第三者の写真やテーマは、制作者が作ったデザイン・原稿と分けて扱います。
| 条件 | 確認する点 |
|---|---|
| 著作権の譲渡 | 対象となる成果物と権利、除外する素材、移転時期 |
| 利用許諾 | 使用する媒体・期間・目的、改変、他社が保守する場合の条件 |
| 将来の改修 | 原稿・画像・画面を変更する範囲と、必要な承諾 |
| 別会社への引き継ぎ | データの提供、改修の委託、許諾や契約の引き継ぎ条件 |
著作権法第61条第2項では、譲渡契約で第27条・第28条の権利が特に明示されていないと、それらの権利は譲渡した側に残ると推定されます。「譲渡があるから自由に改変できる」とだけ判断せず、翻案などの権利と利用条件を確認します。第63条の利用許諾も、合意した方法と条件の範囲で利用する仕組みです。著作権法で原則を確認できます。
また、第59条により著作者人格権は譲渡できません。不行使を定める場合も、対象となる著作者、行為、範囲を確認します。著作権の譲渡と同じものとして扱わず、第三者の素材まで一括で解決する条項とは考えないようにします。
素材・テーマ・プラグインの条件を一覧にする
素材の利用許諾と、更新サービスやサポートを受ける契約は別の条件を持つ場合があります。購入名義だけで判断せず、発注側や後任の会社が利用・更新できるかを製品ごとの規約で確認します。
| 対象 | 受け取る情報 | 引き継ぎ前の確認 |
|---|---|---|
| 写真・イラスト | 素材の識別情報、入手元、利用条件 | 掲載媒体、加工、再使用、第三者への提供 |
| 撮影した写真 | 撮影契約、対象写真、被写体の掲載同意 | 利用目的、掲載期間、掲載終了の連絡方法 |
| フォント | 使用製品、契約者、利用条件 | Webでの提供方式、更新、データ提供の可否 |
| テーマ・プラグイン | 製品名、契約者、更新期限 | 利用許諾と更新・サポートの条件、契約変更の手続き |
| 外部サービス | 契約者、料金、管理者 | メール・予約・計測などの停止と名義変更の影響 |
管理する情報はサイトの引き継ぎチェックリストにまとめます。パスワードを一覧表へ平文で広く配布せず、契約・権限の記録と安全な認証情報の受け渡しを分けます。
追加作業の合意を残す記入例
次は説明用の例で、実際の契約条文や顧客事例ではありません。作業後に金額を初めて知ることがないよう、対象、費用、日程への影響、承認者を記録します。
| 記録項目 | 記入例 |
|---|---|
| 依頼内容 | 承認済みのページ一覧に採用ページを追加する |
| 元の範囲との違い | 元の見積もりには採用原稿と専用画面が含まれていない |
| 作業と担当 | 発注側が原稿を提出し、制作側が画面作成と実装を担当 |
| 費用と日程 | 追加見積もり、税込総額、公開日への影響を別紙で確認 |
| 承認と開始 | 両者が記録を確認し、承認日と担当者を残してから着手 |
修正回数を定める場合は、意見をまとめた提出を1回とするのか、対象画面ごとに数えるのかを確認します。承認後の作り直しや元の仕様と違う機能追加は、文言の訂正と同じ扱いになるとは限りません。
契約前の確認項目
- 見積書・仕様書・契約書の対象と優先順位が揃っている。
- 社内で実施できる検収期限と、未対応事項の扱いが決まっている。
- 修正と仕様変更の違い、追加見積もりと承認手順が決まっている。
- 納品物、権利、素材の利用条件、後任の改修範囲が確認できる。
- 支払い、途中中止、保守の更新・解約条件が確認できる。
- 秘密情報、再委託、実績公開の扱いが決まっている。
文化庁の著作権契約マニュアルも、成果物と利用条件を整理する資料になります。ひな形の条項をそのまま採用する前に、実際の制作と運用に合うかを確認してください。
契約前によくある質問
著作権が制作会社に残る場合は、依頼を断るべきですか
権利の所在だけでは判断できません。自社の利用・改変・別会社への保守委託に必要な許諾と、データの受け渡しを確認します。必要な行為が認められない場合は、その条件と費用を契約前に相談します。
サーバーとデータがあれば、どの会社でも引き継げますか
管理権限に加え、素材や機能の利用条件、技術上の制約を確認します。独自機能や外部サービスがある場合は、改修や契約の変更が必要になることがあります。移せると決める前に、後任へ調査範囲を依頼します。
契約書の記載が曖昧な場合はどうしますか
対象や条件を質問し、合意を補足資料として残します。法律・税務の判断が必要な条項は、契約全体を法務担当者や専門家に確認してもらいます。サイト制作の要件整理と個別の法的判断は担当を分けます。
条件を揃えて依頼先を比べる方法は制作会社の選び方をご覧ください。

