ホームページ制作が遅れる原因の第1位は、技術的な問題でも、デザインの決まらなさでもありません。原稿が出てこないことです。
デザインが完成し、実装も終わっているのに、流し込む文章がない。制作会社は待ち状態になり、その間ほかの案件が入るため、原稿が届いてもすぐには再開できません。1か月の遅れが、実質2か月の遅れになるのはこのためです。
この記事では、文章を書き慣れていない方でも原稿を用意できるように、ページごとの「型」と質問形式のテンプレートを用意しました。写真素材の準備についても、撮影が必要な場面の見極め方から解説します。
この記事で分かること
- ページごとに何をどれくらい書けばよいのか
- 質問に答えるだけで原稿の素材が揃うテンプレート
- 自社で書くか、依頼するかの判断基準
- 撮影が必要な場面と、スマートフォンで足りる場面
なぜ原稿で止まるのか
原稿が出てこない理由は、多くの場合「書く時間がない」ではありません。「何を書けばいいか分からない」です。
白紙のドキュメントを開いて「サービス紹介ページの原稿」と書いた瞬間、手が止まる。これは文章力の問題ではなく、問いが立っていないことが原因です。
逆に、「一番多い相談内容は何ですか」「他社ではなく御社を選ぶ理由を、お客様は何と言っていますか」と聞かれれば、たいていの方はすらすら答えられます。原稿づくりは、作文ではなく「質問への回答」として進めるのが正解です。
もうひとつの原因が、着手のタイミングが遅いことです。原稿はサイト設計(サイトマップとワイヤーフレーム)が固まった時点で着手します。ここで初めて「どのページに、どんな見出しで、どれくらいの分量が必要か」が確定するからです。制作全体の流れはホームページ制作の流れと期間の目安をご覧ください。
ページ別|何をどれくらい書くか
| ページ | 書くべきこと | 分量の目安 |
|---|---|---|
| トップページ | キャッチコピー、事業の要約、各ページへの導入文 | 400〜800字 |
| 会社概要 | 基本情報、沿革、代表挨拶、アクセス | 600〜1,200字 |
| サービス紹介 | 対象者、内容、進め方、料金、よくある質問 | 800〜1,500字/1サービス |
| 実績・事例 | 課題、実施内容、結果 | 300〜600字/1件 |
| お客様の声 | 依頼前の悩み、決め手、依頼後の変化 | 200〜400字/1件 |
| 採用情報 | 募集要項、仕事内容、社員の声、選考の流れ | 1,000〜2,000字 |
| お問い合わせ | 連絡手段、対応時間、返信の目安、個人情報の扱い | 200〜400字 |
10ページ規模なら、合計でおよそ8,000〜12,000字。書き慣れていない方で1ページあたり3〜5時間、合計30〜50時間が目安です。通常業務と並行してこの時間を捻出できるか、着手前に見積もってください。
書けないときの型|質問に答えるだけでいい
以下の質問に、箇条書きで答えてください。文章として整える必要はありません。回答が揃っていれば、制作会社側で原稿の形に整えることができます。
サービス紹介ページ
Q1. このサービスは、どんな人の、どんな困りごとを解決しますか? Q2. お客様から一番多い相談・質問は何ですか?(そのままの言葉で) Q3. 依頼から完了まで、どんな流れで進みますか?(ステップで) Q4. 料金はどう決まりますか? 目安の金額はいくらですか? Q5. 他社ではなく御社を選ぶ理由を、お客様は何と言っていますか? Q6. このサービスが向かないのは、どんな人・どんなケースですか? Q7. 依頼前によく聞かれる不安は何ですか? それにどう答えていますか?
Q6が意外に重要です。「向かないケース」を正直に書いているページは信頼されます。すべての人に向くと書かれたサービスは、誰にも刺さりません。
会社概要・代表挨拶
Q1. 創業のきっかけは何でしたか? Q2. 事業を続けるなかで、大事にしている考え方は何ですか? Q3. 印象に残っているお客様とのエピソードはありますか? Q4. 今後、どんな会社にしていきたいですか? Q5. お客様に一番伝えたいことを、一文で言うと?
代表挨拶は、格式張った定型文になりがちな箇所です。実際に話した言葉に近いほうが、読み手には届きます。音声で録音して、それを文字に起こすところから始めるのも有効な方法です。
実績・事例
Q1. お客様はどんな業種・規模でしたか? Q2. 相談を受けた時点で、何に困っていましたか? Q3. どんな提案をし、実際に何をしましたか? Q4. 結果はどうなりましたか?(数字があれば具体的に) Q5. 進めるうえで工夫した点、苦労した点は?
実績は「何を作ったか」より「どんな課題をどう解決したか」を書くほうが、読み手の判断材料になります。写真を並べるだけの実績紹介は、デザインの好み以上の情報を伝えません。
掲載にあたっては、お客様の社名や内容を出してよいか、必ず事前に確認してください。
お客様の声
お客様に直接聞く場合は、次の3問だけで十分です。
Q1. ご依頼の前は、どんなことでお困りでしたか? Q2. 数ある会社のなかで、当社に決めた理由は何でしたか? Q3. ご依頼後、どんな変化がありましたか?
Q1があることで、読み手は「自分と同じ状況の人だ」と認識できます。いきなり褒め言葉から始まる推薦文より、悩みから始まる話のほうが読まれます。
なお、実在しない声を作ることや、対価を渡して書かせた声を自発的な感想であるかのように見せることは、景品表示法上の問題になり得ます。取材した内容を、本人の確認を得て掲載してください。
原稿を書くときの5つのコツ
1. 社内用語を使わない
業界では当たり前の言葉でも、お客様は知りません。「その言葉を初めて聞く人に説明するなら、どう言うか」を基準にしてください。専門用語を使う場合は、初出時に一言添えます。
2. 抽象的な形容を、具体で置き換える
| 伝わりにくい | 伝わる |
|---|---|
| 丁寧な対応を心がけています | ご相談から24時間以内に、担当者から必ずご連絡します |
| 豊富な実績があります | 創業から18年、累計320件の施工を担当してきました |
| お客様第一主義です | 着工後の仕様変更も、追加費用の見積もりを出したうえで対応します |
右側のような文は、競合が簡単には真似できません。具体的であることが、そのまま差別化になります。
3. 結論から書く
Webの読み手は、必要な情報がなければすぐに離脱します。背景説明から入らず、そのページで最も伝えたいことを最初に置いてください。
4. 料金は書く
「案件によるので書けない」という理由で料金を伏せるケースが多くありますが、訪問者が最も知りたい情報のひとつです。正確な金額が出せなくても、次のような書き方はできます。
- 「一般的なケースで◯万円〜◯万円」と幅で示す
- 実際の事例を3件挙げ、それぞれの条件と金額を示す
- 金額が変わる要因(規模・仕様・期間)を説明する
料金の目安がないページは、問い合わせのハードルを大きく上げます。
5. 完璧を目指さない
公開後にいくらでも直せます。80%の完成度で出すほうが、100%を目指して3か月遅れるより価値があります。特にCMSで自社更新できる構成なら、公開後の改善は容易です。
自社で書くか、依頼するか
ライティングを依頼すると、1ページあたり1万〜5万円が目安です。「費用を抑えたいから自社で書く」という判断は自然ですが、社内工数との見合いで考えてください。
10ページ分を社内で書けば30〜50時間。人件費に換算すれば、依頼費用と大きくは変わりません。そのうえ納期が延びるリスクを自社が負うことになります。
| ページ | おすすめの担当 | 理由 |
|---|---|---|
| 会社概要・沿革・アクセス | 自社 | 事実を書くだけ。調べる手間もない |
| 実績・事例 | 自社(下書き)+制作会社(整形) | 内容は自社しか知らない。文章化は任せられる |
| 代表挨拶 | 自社(口述)+制作会社(構成) | 本人の言葉が価値。話した内容を整えてもらう |
| トップページ・サービス紹介 | 制作会社 | 読ませる設計が必要。成果への影響が最も大きい |
| 採用情報 | 制作会社(取材あり) | 社員インタビューは第三者が聞くほうが引き出せる |
全部を任せるか、全部を自社でやるかの二択ではありません。「事実を書くページは自社、読ませるページはプロ」という分担が、費用と成果のバランスとしては現実的です。
ライティング費用の相場はホームページ制作費用の相場でも解説しています。
写真素材の準備
撮影が必要な場面、スマートフォンで足りる場面
| 用途 | 推奨 | 理由 |
|---|---|---|
| トップページのメインビジュアル | プロ撮影 | 第一印象を決める。ここだけでも依頼する価値がある |
| 代表・社員の写真 | プロ撮影 | 信頼感に直結する。ライティングの差が大きく出る |
| 店舗・オフィスの外観・内観 | プロ撮影 | 広角と明るさの調整が難しい |
| 施工事例・制作物 | 状況による | 明るい屋外ならスマートフォンでも実用に足りる |
| 商品の物撮り | プロ撮影 | 背景の処理と色の再現が必要 |
| ブログ・お知らせ用 | スマートフォン | 更新頻度が高いため、手軽さを優先する |
予算が限られる場合は、メインビジュアルと人物写真だけをプロに依頼するのが費用対効果の高い選び方です。撮影費用は5万〜20万円/日が目安で、1日でかなりの点数を撮影できます。
撮影当日までに準備すること
- 撮影リストを作る:どのページのどこに使う写真かを事前に決める。当日その場で考えると必ず撮り漏れます
- 登場する社員に事前連絡する:服装の指定、当日のスケジュール確保
- 撮影場所を片付ける:背景に写り込む物は事前に整理する。これが仕上がりを大きく左右します
- 天候の予備日を設ける:屋外撮影がある場合は必須
- 肖像権の取り決め:退職後も写真を使ってよいかを書面で確認しておく
最後の項目は後回しにされがちですが、「退職したので写真を消してほしい」という要望は実際に発生します。撮影時に取り決めておけば、後の対応が明確になります。詳しくはホームページ制作の契約・著作権・検収の実務をご覧ください。
ストックフォトを使う場合の注意
有料・無料のストックフォトは便利ですが、次の点に注意してください。
- ライセンスの範囲:商用利用の可否、改変の可否、クレジット表記の要否
- 購入名義:制作会社名義だと、乗り換え後に使えなくなる可能性がある
- 同業他社との重複:定番の素材は、同じ地域の競合が使っていることがある
- 実態との乖離:外国人モデルのオフィス写真が並ぶ日本の中小企業サイトは、かえって信頼を損ないます
最後の点は軽視されがちです。実際の社員・実際の現場の写真は、それだけで説得力を持ちます。多少の画質差より、実物であることのほうが価値が高い場面は少なくありません。
素材の渡し方
| 素材 | 形式 | 注意点 |
|---|---|---|
| 原稿 | Word / Googleドキュメント / テキスト | PDFは修正の反映が面倒。ページ単位でファイルを分ける |
| 写真 | 撮影したままの元データ | 圧縮・リサイズせずに渡す。加工は制作側で行う |
| ロゴ | ai / eps / svg(ベクター形式) | jpgしかない場合は早めに伝える。作り直しが必要になることがある |
| 既存パンフレット | 入稿データ / PDF | 原稿の下敷きになる。早いほど精度が上がる |
ファイル名は「01_トップ_メインビジュアル.jpg」のように、使う場所が分かる名前にしてください。「IMG_4821.jpg」が100枚届くと、どれをどこに使うのかの確認だけで数日かかります。
受け渡しは、ファイル数が多い場合はクラウドストレージの共有フォルダが確実です。メール添付は容量制限で届かないことがあります。
よくある失敗
- 他社サイトの文章を参考にしすぎる:表現をそのまま使うと著作権侵害になり得ます。構成の参考に留めてください
- 原稿を全ページ完成させてから渡そうとする:できたページから順に渡すほうが、制作は早く進みます
- 決裁者の確認を最後にまとめて取る:全ページ差し戻しになると致命的です。方向性が決まった時点で一度見てもらってください
- ロゴの元データが見つからない:制作から年数が経つと起こります。早めに探し始めてください
- 写真をスマートフォンで送って画質が落ちる:メッセージアプリ経由の送信は自動的に圧縮されることがあります
よくある質問
Q. 文章が苦手です。箇条書きでも大丈夫ですか?
問題ありません。情報が揃っていれば、文章に整えるのは制作会社の仕事です。本記事の質問テンプレートに箇条書きで答えるだけでも、原稿の素材としては十分です。ただし、その整形作業が見積もりに含まれているかは確認してください。
Q. 既存サイトの文章をそのまま使ってもいいですか?
自社が権利を持っているなら可能です。ただし、リニューアルの目的が「問い合わせを増やす」なら、文章をそのまま移すだけでは成果は変わりません。情報が古くなっていないか、料金や実績が更新されているかも合わせて確認してください。
Q. AIで原稿を作ってもいいですか?
下書きや構成の整理には有効です。ただし、そのまま使うとどこにでもある一般論のページになります。自社の実績、料金、具体的なエピソードは自社にしかない情報です。AIは文章化の補助として使い、中身は自社で用意してください。事実関係の誤りが混入していないかの確認も必須です。
Q. 写真がまったくありません。どうすればよいですか?
撮影を依頼するのが最善ですが、予算が厳しい場合はメインビジュアルと人物写真だけプロに依頼し、残りはストックフォトと自社撮影で補う構成を相談してください。写真がないままの公開は、信頼性の面で大きな損失になります。
Q. 原稿の締切に間に合いそうにありません
早めに制作会社へ伝えてください。黙って遅れるのが最も悪い対応です。スケジュールの組み直しや、一部ページを後日公開にする、ライティングを追加で依頼するなど、対応策は複数あります。判断が早いほど選択肢が残ります。
まとめ
- 原稿は作文ではなく「質問への回答」として進める
- 着手はサイト設計が固まった時点。10ページで30〜50時間かかる
- 「事実を書くページは自社、読ませるページはプロ」の分担が現実的
- 予算が限られるならメインビジュアルと人物写真だけプロ撮影に
- 写真は元データのまま、使う場所が分かるファイル名で渡す
- 80%で公開し、あとから直す。完璧を待って遅れるほうが損失が大きい
素材の準備は、制作会社との役割分担を最初に決めておくことが何より重要です。分担の決め方はホームページ制作会社の選び方でも触れています。
