士業事務所のホームページには、他業種にはない特徴があります。訪問者の多くが「困っている状態」で、しかも初めて士業に相談する人だという点です。
相続、離婚、労務トラブル、税務調査——本人にとっては一大事ですが、誰にどう相談すればいいのか分かりません。そして多くの場合、3〜5事務所を比較したうえで1つに絞ります。
この記事では、比較されることを前提とした士業サイトの設計を解説します。
この記事で分かること
- 相談者が実際に確認している3つのこと
- 取扱分野ページを分けて作るという設計の考え方
- 料金の書き方と、書けない場合の代替案
- 業務広告規程で気をつける表現
相談者が知りたいのは3つだけ
| 知りたいこと | 用意するもの |
|---|---|
| 自分の悩みを扱ってくれるのか | 取扱分野ごとの独立したページ。「相続に強い」ではなく、相続のどの場面に対応できるか |
| いくらかかるのか | 料金表。難しければ実例3件と、金額が変わる要因 |
| どんな人が対応するのか | 顔写真、経歴、資格、これまでの取扱件数、事務所の方針 |
この3つに答えていないサイトは、どれだけデザインが整っていても問い合わせにつながりません。逆に言えば、この3つが揃っていれば、小規模事務所でも十分に戦えます。
取扱分野ページを分けて作る
士業サイトの設計で、最も効果が大きく、最も見落とされている点です。
「業務内容」という1ページに、相続・遺言・成年後見・企業法務……とすべてを箇条書きで並べているサイトをよく見かけます。これは集客の観点でも、相談者の理解の観点でも損をしています。
| 1ページにまとめる | 分野ごとに分ける | |
|---|---|---|
| 検索で拾える語 | 事務所名+地域名程度 | 「地域名+相続」「地域名+顧問税理士」など分野ごと |
| 相談者の理解 | 自分の件が該当するか分からない | 該当ページを読めば、進め方まで分かる |
| 料金の示し方 | まとめて書くと複雑になる | 分野ごとに明快に書ける |
1つの分野ページに書く内容
- こんなお悩みはありませんか:相談者の言葉で、具体的な状況を3〜5個
- 放置するとどうなるか:期限がある手続きなら、その期限を明示
- 当事務所ができること:具体的な業務範囲
- ご依頼の流れ:初回相談から完了までのステップと期間
- 費用:報酬額と、実費として別途かかるもの
- よくある質問:その分野で実際に受ける質問
- 相談窓口への導線
「こんなお悩みはありませんか」は、専門用語ではなく相談者の言葉で書くことが重要です。「遺産分割協議が難航」ではなく「兄弟で話がまとまらない」。実際に電話で相談を受けたときの言い回しをそのまま使ってください。検索されている言葉にも近くなります。
必要なページ構成
| ページ | 内容 | 優先度 |
|---|---|---|
| トップ | 取扱分野への導線、相談窓口、事務所の特徴 | 必須 |
| 取扱分野(分野ごと) | 前述の7要素 | 必須・最重要 |
| 料金 | 分野別の報酬額、実費、支払時期 | 必須 |
| 事務所紹介・所属士業紹介 | 顔写真、経歴、資格、登録番号、所属会 | 必須 |
| アクセス | 地図、最寄駅からの経路、駐車場、対応時間 | 必須 |
| 相談の流れ | 初回相談で何を聞かれるか、持ち物 | 高 |
| よくある質問 | 費用、期間、秘密保持、対応エリア | 高 |
| 解決事例 | 個人が特定されない形で。所属会の規程を要確認 | 中 |
| お知らせ・コラム | 法改正の解説など。専門性の証明になる | 中 |
「相談の流れ」ページを軽視しないでください。初めて士業に相談する人は、何を持っていけばいいのか、いきなり費用が発生するのかが分からず、それだけで問い合わせを躊躇します。「初回相談は60分・無料。お手元にある資料があればお持ちください」と書くだけで、ハードルは大きく下がります。
料金の書き方
「案件によって異なるため記載できない」という判断はよく理解できますが、相談者にとっては最大の不安要素です。何らかの形で示してください。
| 書き方 | 例 |
|---|---|
| 定額で示す | 「遺言書作成サポート 11万円(税込)〜」 |
| 幅で示す | 「相続手続き一式 22万円〜55万円(相続人数・財産の内容による)」 |
| 実例で示す | 「相続人3名・不動産1件・預貯金のみの場合 ◯◯円」を3パターン |
| 変動要因を説明する | 「相続人の人数」「不動産の有無」「争いの有無」で変わる旨を明記 |
あわせて、報酬とは別にかかる実費(登録免許税、印紙代、証明書取得費用など)も明記してください。「思っていたより高かった」というトラブルの大半は、ここの説明不足から生じます。
支払時期(着手時か、完了時か、分割可か)も書いておくと親切です。
業務広告規程で気をつける表現
士業は、それぞれの法律や所属会の規程により、広告表現に制約があります。資格ごとにルールが異なるため、必ず所属会の最新の規程を確認してください。
一般に注意が必要とされるのは次のような表現です。
- 優位性を示す表現:「地域No.1」「日本一」「最も選ばれている」
- 結果を保証する表現:「必ず解決します」「100%成功」
- 他事務所との比較:他を貶める形での比較
- 誤認を与える実績表示:根拠のない件数や勝訴率
- 依頼者の特定につながる事例紹介:守秘義務との関係
安全なのは、事実を淡々と書くことです。「開業から18年」「相続関連のご相談を年間◯件」「税理士登録番号◯◯」——検証可能な事実は、それ自体が信頼になります。
解決事例を載せる場合は、依頼者が特定されないよう内容を抽象化し、可能であれば掲載の同意を得てください。判断に迷う場合は、所属会に確認するのが確実です。
※本記事は一般的な留意点の解説であり、個別の表現の可否を判断するものではありません。
相談導線の設計
士業への相談は、電話が今なお主要な導線です。ただしフォームも必ず用意してください。理由は2つあります。
- 営業時間外の相談を取りこぼさない
- 内容がデリケートで、いきなり話すことに抵抗がある相談者がいる
設計のポイントです。
- スマートフォンでは画面下部に「電話」「相談フォーム」を固定表示
- 電話番号はタップで発信できるように
- 受付時間と、時間外の対応方針を明記
- フォームは名前・連絡先・相談内容の3項目まで削る
- 秘密は守られる旨を、フォームのすぐ近くに書く
- 返信の目安(「2営業日以内にご連絡します」)を明示
最後から2つ目が特に効きます。相談内容がデリケートなほど、「相談したことが外部に漏れないか」という不安が行動を止めます。守秘義務について一文添えるだけで、送信率は変わります。
フォームからのメールが確実に届くかは必ずテストしてください。確認方法は問い合わせが来ない原因診断にまとめています。
費用と進め方
| 項目 | 目安 |
|---|---|
| 制作費用 | 50万〜150万円(取扱分野の数で変動) |
| 制作期間 | 2〜4か月 |
| ページ数 | 10〜20ページ(分野ページの数次第) |
費用を左右するのは取扱分野ページの数です。分野が5つあれば、実質的に5種類のページを作ることになります。予算が限られる場合は、受注につながりやすい分野を2〜3に絞って公開し、あとから追加するのが現実的です。
費用の考え方はホームページ制作費用の相場、制作の流れは制作の流れと期間の目安をご覧ください。士業の実績がある制作会社は士業事務所のホームページ制作に強いWeb制作会社から探せます。
よくある失敗
1|「業務内容」1ページに全分野を詰め込む
前述のとおり、最も多く、最も損をしている構成です。相続を探している人にも、顧問税理士を探している人にも、同じページを見せることになります。分野ごとにページを分けるだけで、検索流入も問い合わせの質も変わります。
2|「親身に対応します」で差別化しようとする
すべての事務所が同じことを書いているため、差別化になりません。書くなら具体的な運用に落としてください。
| 伝わらない | 伝わる |
|---|---|
| 親身に対応します | 初回相談は60分いただき、その場で概算の費用と期間をお伝えします |
| 迅速な対応 | ご連絡は2営業日以内。急ぎの案件は当日中に折り返します |
| 豊富な実績 | 相続関連のご相談を年間◯件、うち不動産を含む案件が約◯割 |
| お客様目線 | 専門用語を使わず、書面はすべて平易な言葉で作成しています |
3|事務所の外観写真だけで、人が写っていない
相談者が知りたいのは建物ではなく人です。顔写真がないサイトは、それだけで候補から外れることがあります。複数名の事務所なら、担当分野とあわせて全員分を掲載してください。
4|受付時間しか書かず、時間外の扱いが不明
相談を思い立つのは、多くの場合、夜間や休日です。「フォームは24時間受付。翌営業日にご連絡します」と書いてあるかどうかで、その場で行動するか諦めるかが分かれます。
5|公開後に一度も更新していない
法改正への対応が求められる職種で、サイトの情報が3年前のままだと、専門性そのものを疑われます。最低限、料金表と取扱分野は年1回見直してください。
できあがったサイトのほうから設計を確かめたい場合は、士業事務所のウェブサイトデザインをご覧ください。
制作会社とスタッフの名前まで載せています。
よくある質問
Q. 顔写真は必ず載せるべきですか?
強くおすすめします。相談者は「誰に話すことになるのか」を気にしています。顔写真の有無で、問い合わせのしやすさは明確に変わります。撮影はプロに依頼してください。表情と光の質が印象を大きく左右します。
Q. コラムは書いたほうがよいですか?
継続できるなら有効です。法改正の解説や、よく受ける質問への回答は、専門性の証明になり検索流入も生みます。ただし月1本でも続けられないなら、無理に始めないほうがよいです。半年更新が止まったコラムは、かえって印象を悪くします。
Q. 対応エリアはどこまで書くべきですか?
実際に対応できる範囲を正直に書いてください。広げすぎると、遠方からの問い合わせ対応で工数を取られます。「◯◯市を中心に、◯◯県全域」「オンライン相談は全国対応」のように、条件つきで示すのが実務的です。
Q. 初回相談を無料にすべきですか?
集客面では有利ですが、相談だけの来訪が増える面もあります。「初回60分無料」のように時間を区切る、対象分野を限定するといった設計にすると、バランスが取りやすくなります。いずれにせよ、有料・無料はサイト上で明確にしてください。
まとめ
- 相談者が知りたいのは「扱ってくれるか」「いくらか」「誰か」の3つ
- 取扱分野ページを分けて作る。1ページにまとめると集客も理解も損なう
- 悩みは相談者の言葉で書く。専門用語で書かない
- 料金は定額・幅・実例のいずれかで示し、実費も明記する
- 優位性や結果保証の表現は避け、検証可能な事実を書く
- フォーム付近に守秘義務についての一文を置く
士業サイトは、デザインの華やかさより情報の明確さで選ばれます。掲載内容の準備は原稿・写真素材の準備を参考にしてください。

