「各社から提案をもらったが、内容がバラバラで比較できない」
ある程度の規模のホームページ制作でこの状態になるのは、発注側が要件を文書化していないことが原因です。口頭のヒアリングだけで提案を求めれば、各社が自社の得意分野に引き寄せた提案を出してくるのは当然です。
これを解決するのがRFP(Request For Proposal=提案依頼書)です。この記事では、記載すべき10項目と、そのままコピーして使えるテンプレートを用意しました。
この記事で分かること
- RFPが必要なケースと、不要なケースの見極め方
- RFPに書くべき10項目と、それぞれの書き方
- そのまま使えるRFPテンプレート
- 提案を受けたあとの評価表の作り方
RFPとは|見積もり依頼との違い
RFPは、発注側が「実現したいこと」と「制約条件」を文書にまとめ、制作会社に提案を求める書類です。見積もり依頼との違いは、求めるものにあります。
| 見積もり依頼 | RFP(提案依頼書) | |
|---|---|---|
| 求めるもの | 金額 | 課題の解決方法+金額 |
| 発注側が示すもの | 作りたいものの仕様 | 解決したい課題と制約条件 |
| 制作会社の裁量 | 小さい | 大きい(手段は提案してもらう) |
| 分量 | メール1通 | A4で3〜10ページ程度 |
| 向いている規模 | 〜100万円程度 | 100万円以上、または要件が複雑な案件 |
ポイントは3行目です。RFPでは「どう作るか」を指定しません。課題と条件を示し、解決方法は提案してもらう。だからこそ各社の実力差が提案内容に表れます。
RFPが必要なケース・不要なケース
| RFPを作るべき | メール1通で十分 |
|---|---|
| 予算が100万円以上 | 予算が数十万円規模 |
| 社内稟議で選定理由の説明が必要 | 決裁者が自分自身 |
| 会員機能・システム連携など要件が複雑 | 一般的なコーポレートサイト |
| 複数部署の要望を取りまとめる必要がある | 要望が明確に固まっている |
| 各社の提案力を比較して選びたい | すでに依頼したい会社が決まっている |
小規模なコーポレートサイトであれば、RFPまでは不要です。その場合は相見積もりの取り方と見積書の読み方で紹介している依頼文テンプレートで十分に条件を揃えられます。
逆に、RFPを作らずに大型案件を進めると、認識のズレが制作中盤で表面化します。その時点での軌道修正は、追加費用と納期延長を伴います。
RFPに書く10項目
1. 発注の背景と現状の課題
最も重要な項目です。「なぜ今、この投資をするのか」が書かれていないRFPには、良い提案は返ってきません。
数字で書いてください。「問い合わせが少ない」ではなく「月3件で、うち2件は既存顧客からの紹介。新規の問い合わせは月1件」。制作会社は、この数字を起点に施策を考えます。
2. サイトの目的と目標
目的を1つに絞り、達成の判断基準を数値で置きます。
- 目的:新規問い合わせの獲得
- 目標:公開1年後に、サイト経由の新規問い合わせを月10件(現状月1件)
- 副次目標:採用応募の受け皿として機能させる
目的が複数ある場合は、必ず優先順位をつけてください。「問い合わせも採用もブランディングも」という指示は、結果としてどれも中途半端なサイトになります。
3. ターゲット
誰に届けたいのかを具体化します。BtoBなら業種・企業規模・想定する担当者の役職、BtoCなら年代・地域・利用シーン。あわせて、その人がどういう経緯でサイトにたどり着き、何を確認して問い合わせに至るのかという検討プロセスも書いてください。
4. 要求事項(ページ・機能)
必要なページと機能を、「必須」と「任意(あれば望ましい)」に分けて書きます。この区別があると、予算に応じた提案が出てきます。
ページ数ではなく「型が違うページが何種類あるか」で示すと、見積もりの精度が上がります。スタッフ紹介10人分は、型としては1種類です。
5. デザイン要件
言葉で伝えにくい領域なので、参考サイトを3つ、良いと感じる理由を添えて示すのが最も確実です。避けたい方向性も書いてください。ブランドガイドラインやロゴの使用規定があれば添付します。
6. 技術要件
| 項目 | 書くこと |
|---|---|
| CMS | 自社で更新したい範囲。指定がなければ「提案を求む」と書く |
| サーバー・ドメイン | 既存契約の有無。自社名義での契約を条件として明記する |
| 対応環境 | スマートフォン対応、対応ブラウザの範囲 |
| アクセシビリティ | 準拠レベルの要否 |
| 外部連携 | 予約システム、顧客管理、求人媒体などの連携要件 |
| 保守 | 希望する保守範囲と、想定する月額 |
サーバー・ドメインの名義は必ず条件として書いてください。制作会社名義で契約されると、将来の乗り換え時にサイトもメールも動かせなくなります。
7. 体制と役割分担
ここを書いていないRFPが非常に多く、後の揉め事の原因になります。次の分担を明記してください。
| 項目 | 自社 | 制作会社 |
|---|---|---|
| 原稿の執筆 | ◯/△ | ◯/△ |
| 写真撮影 | △ | ◯ |
| ロゴ・素材の提供 | ◯ | — |
| 既存コンテンツの移行 | △ | ◯ |
| 公開後の更新 | ◯ | △ |
あわせて、自社側の窓口担当者と決裁者、想定する打ち合わせ頻度も書きます。
8. 予算
初期費用の上限と、月額の想定を分けて書きます。「予算を伝えると足元を見られる」という懸念がありますが、内訳の提示を求めれば妥当性は判断できます。予算を伏せると、各社が無難な標準構成で見積もり、提案がかみ合わなくなります。
相場感が分からない場合はホームページ制作費用の相場で規模別の目安を確認してから設定してください。
9. スケジュール
公開希望日と、その理由(展示会、開業日、採用時期など)を書きます。あわせてRFP自体の進行スケジュールも明示します。
- RFP配布日/質問受付の締切/回答日
- 提案書の提出期限(3週間程度は確保する)
- プレゼンテーション実施日
- 選定結果の通知日
10. 提案の要件と選定方法
提案書に含めてほしい項目(体制図、実績、スケジュール案、見積内訳など)と、評価の観点を公開します。評価基準を先に示すことで、各社が的を絞った提案を作れます。
デザイン案の提出を求めるかどうかも明記してください。求める場合、無償を前提とするのは制作会社に大きな負担を強います。選定に残った会社へは提案料を支払うという条件にすると、提案の質が上がります。
そのまま使えるRFPテンプレート
以下をコピーし、〇〇部分を自社の情報に置き換えてご利用ください。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ホームページ制作 提案依頼書(RFP) 株式会社〇〇 〇〇年〇月〇日 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ■ 1. 発注の背景と現状の課題 ・当社は〇〇(事業内容)を〇〇(商圏)で展開しています。 ・現サイト(https://example.com/)は〇年に制作し、以降大きな更新を 行っていません。 ・現状の課題: - 問い合わせが月〇件にとどまり、うち〇件は既存顧客からの紹介 - スマートフォンからの閲覧が全体の〇%を占めるが最適化されていない - 社内で更新できず、情報が〇年前のまま - 〇〇 ■ 2. サイトの目的と目標 ・主目的:〇〇(例:新規問い合わせの獲得) ・目標:公開1年後にサイト経由の新規問い合わせを月〇件(現状月〇件) ・副次目的:〇〇(例:採用応募の受け皿) ■ 3. ターゲット ・主要ターゲット:〇〇(業種/企業規模/担当者の役職 ほか) ・想定する検討プロセス: 〇〇で検索 → 当社サイトを閲覧 → 〇〇を確認 → 問い合わせ ■ 4. 要求事項 【必須】 ・トップページ ・会社概要/〇〇/〇〇(型が違うページ 計〇種類) ・実績一覧(〇件)/お知らせ一覧 ・お問い合わせフォーム ・お知らせを自社で更新できる機能 【任意(あれば望ましい)】 ・〇〇 ・〇〇 ■ 5. デザイン要件 ・参考サイト 1) https://example.com/ :〇〇が良い 2) https://example.com/ :〇〇が良い 3) https://example.com/ :〇〇が良い ・避けたい方向性:〇〇 ・ブランドガイドライン:あり(別添)/なし ■ 6. 技術要件 ・CMS:自社で〇〇を更新したい(具体的な指定はなく、提案を求めます) ・サーバー/ドメイン:当社名義での契約を必須条件とします (現契約:〇〇/新規契約が必要) ・対応環境:スマートフォン対応必須、対応ブラウザは〇〇 ・外部連携:〇〇(例:予約システム/求人媒体) ・保守:月額〇〇円程度を想定。含めるべき範囲についても提案を求めます ■ 7. 体制と役割分担 ・当社窓口:〇〇部 〇〇(決裁者:〇〇) ・原稿:〇〇が担当(一部制作会社に依頼したい/全て自社で用意) ・写真撮影:撮影を依頼したい/自社素材を使用 ・既存コンテンツの移行:〇〇件、移行作業は〇〇が担当 ・打ち合わせ:〇週に1回程度、オンライン可 ■ 8. 予算 ・初期費用:〇〇万円(税別)を上限とします ・月額費用:〇〇円程度を想定 ・お見積もりは「一式」ではなく工程ごとの内訳をご記載ください ・お見積もりに含まれない作業がある場合、あわせてご教示ください ■ 9. スケジュール ・RFP配布:〇月〇日 ・質問受付締切:〇月〇日(回答:〇月〇日) ・提案書提出期限:〇月〇日 ・プレゼンテーション:〇月〇日 ・選定結果通知:〇月〇日 ・制作着手:〇月 ・公開希望:〇年〇月(理由:〇〇) ■ 10. ご提案いただきたい内容 1) 課題に対する解決方針 2) サイト構成案(サイトマップ) 3) 実施体制(担当者の役割と、公開後の窓口) 4) 制作スケジュール 5) 見積書(工程ごとの内訳を明記) 6) 類似実績(可能な範囲で成果もお示しください) ※デザイン案の提出は必須としません。 ■ 11. 選定の評価観点 ・課題理解の的確さ 30% ・提案内容の具体性と実現性 30% ・費用の妥当性 20% ・体制・運用サポート 20% ■ 12. お問い合わせ先 株式会社〇〇 〇〇部 〇〇 メール:〇〇@〇〇 ※ご質問は〇月〇日までにメールにてお願いいたします。 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
RFPを書くときの3つの注意点
1. 手段を指定しすぎない
「WordPressで作ること」「〇〇というプラグインを使うこと」と手段を固定すると、提案の幅が消えます。書くべきは「自社で月〇回お知らせを更新したい」という要求で、実現手段は提案してもらうのが原則です。
ただし、社内の既存システムとの兼ね合いなど、譲れない制約は明記してください。制約と手段の指定は違います。
2. 完璧を目指さない
RFPを完璧に書こうとして、作成に3か月かかってしまうケースがあります。分からない項目は「提案を求めます」と書けば十分です。むしろ、そこにこそ各社の考え方が表れます。
3. 提案期間を十分に取る
提案書の作成には、制作会社側で20〜40時間かかります。提出期限は最低3週間、できれば1か月を確保してください。期間が短いと、使い回しのテンプレート提案しか出てきません。
提案を受けたあとの進め方
提案書が揃ったら、評価表を作って点数化します。RFPで公開した評価観点と同じ配点にしてください。
| 評価観点 | 配点 | A社 | B社 | C社 |
|---|---|---|---|---|
| 課題理解の的確さ | 30 | |||
| 提案内容の具体性と実現性 | 30 | |||
| 費用の妥当性 | 20 | |||
| 体制・運用サポート | 20 | |||
| 合計 | 100 |
点数だけで機械的に決める必要はありませんが、社内稟議では「なぜこの会社を選んだか」の説明が必要になります。評価表があれば、その説明がそのまま作れます。
プレゼンテーションを実施する場合は、実際に担当する人を出席させてもらってください。営業担当だけが出てきて、制作は別チームというケースでは、認識のズレが起きやすくなります。この点も含めた会社の見極め方はホームページ制作会社の選び方にまとめています。
よくある質問
Q. RFPは何社に配布すべきですか?
3〜5社が適正です。それ以上になると、各社の提案を読み込む発注側の工数が現実的でなくなります。また受注確度が下がるため、提案の熱量も落ちます。
Q. RFPは何ページくらいが適切ですか?
A4で3〜10ページが目安です。分量より、10項目が漏れなく書かれているかが重要です。本記事のテンプレートを埋めれば、必要な情報は揃います。
Q. 質問への回答は、全社に共有すべきですか?
共有してください。1社からの質問で明らかになった前提を、その社だけが知っている状態は公平ではありません。質問と回答をまとめて全社に配布するのが標準的な運用です。
Q. デザイン案の提出を求めてもいいですか?
求めること自体は可能ですが、無償を前提とするのは負担が大きく、提案を辞退される要因にもなります。求める場合は提案料の支払いを条件に含めてください。また、採用しなかった提案のアイデアを他社に流用するのは、業界内で確実に評判を落とします。
Q. 予算を書かずに提案を求めることはできますか?
可能ですが、おすすめしません。各社が想定する規模がバラバラになり、比較できない提案が集まります。「上限〇〇万円」と示したうえで、その範囲での最適解を求めるほうが、良い提案を引き出せます。
まとめ
- RFPは予算100万円以上、または要件が複雑な案件で作る。小規模なら依頼文で十分
- 書くのは課題と制約条件。「どう作るか」は提案してもらう
- 役割分担(原稿・写真・移行)を明記する。ここが後の揉め事の最大要因
- サーバー・ドメインは自社名義を必須条件として書く
- 提案期間は最低3週間。評価観点は事前に公開する
発注先が決まったあとの進行についてはホームページ制作の流れと期間の目安をご覧ください。

