工務店・建設会社のホームページは、施工事例がすべてと言っても過言ではありません。
家づくりやリフォームを検討する人は、必ず複数社を比較します。そのとき決め手になるのは、会社の歴史でも施工実績の「数」でもなく、「自分が建てたい家に近いものを、この会社が実際に建てているか」です。
この記事では、施工事例を軸にした工務店サイトの設計と、問い合わせにつなげるための構成を解説します。
この記事で分かること
- 施工事例ページの正しい作り方と、絞り込みの設計
- 価格をどう示すか(書けない事情への対処)
- 地域名での検索に強くする方法
- 写真撮影と、掲載時の許諾の取り方
施工事例の作り方
多くの工務店サイトが、施工事例を写真ギャラリーとして扱っています。これは大きな機会損失です。
1件ごとに必要な情報
| 項目 | なぜ必要か |
|---|---|
| 施工エリア | 「◯◯市の工務店」で探している人に届く |
| 建物種別・構造 | 新築/リノベーション、木造/鉄骨など |
| 延床面積・間取り | 自分の計画と比較できる |
| 価格帯 | 最大の判断材料。幅でよいので必ず示す |
| 工期 | 入居時期の逆算に必要 |
| お客様のご要望 | 「自分と同じ希望だ」と思ってもらえる |
| 工夫した点・提案した内容 | ここが提案力の証明になる |
| 写真(外観・内観・水回り) | 1件あたり最低6〜10枚 |
特に重要なのが「お客様のご要望」と「工夫した点」です。
写真だけ並んでいると、読み手は「きれいだな」で終わります。しかし「共働きで家事動線を短くしたいというご要望に対し、洗面・脱衣・物干しを一直線に配置しました」と書かれていれば、提案力が伝わります。これは競合が真似できない情報です。
絞り込みの設計
事例が20件を超えたら、絞り込み機能を入れてください。
- エリア(市区町村)
- 種別(新築/リフォーム/リノベーション/店舗)
- 価格帯
- テイスト(ナチュラル/モダン/和風 など)
- 間取り・家族構成
制作会社に依頼する際は、「施工事例をカスタム投稿タイプで作り、これらの項目で絞り込めるようにしてほしい」と伝えてください。この設計を最初にしておかないと、事例が増えたときに作り直しになります。
また、自社で事例を追加できる構成にすることが必須です。事例の追加を都度依頼していると、1件5,000〜10,000円かかり、やがて更新が止まります。
価格をどう示すか
「仕様によって変わるので出せない」——理解できます。しかし価格の目安がないサイトは、問い合わせのハードルが極端に高くなります。
| 示し方 | 例 |
|---|---|
| 坪単価の幅 | 「坪単価65万〜85万円(付帯工事・諸費用別)」 |
| 事例ごとの総額 | 「延床32坪/本体工価2,400万円台」 |
| 価格帯別のプラン | 「1,800万円台/2,400万円台/3,000万円台」の3ライン |
| 含まれないものを明記 | 「別途:地盤改良、外構、カーテン、照明、登記費用」 |
最後の行が実は最も重要です。建築費で揉める最大の原因は、「本体価格に含まれないもの」の説明不足です。サイトの段階で明記しておけば、期待値のずれた問い合わせが減り、商談の質が上がります。
価格を書くと問い合わせが減ると思われがちですが、減るのは予算の合わない問い合わせです。対応工数の削減という意味では、むしろ利益に貢献します。
必要なページ構成
| ページ | 内容 | 優先度 |
|---|---|---|
| トップ | 施工事例への導線、対応エリア、価格帯、来場予約 | 必須 |
| 施工事例(一覧+詳細) | 前述の8項目。絞り込みつき | 必須・最重要 |
| 家づくりの流れ | 相談から引き渡しまでのステップと期間 | 必須 |
| 価格・費用 | 坪単価、含まれるもの/別途費用 | 必須 |
| 会社概要・スタッフ紹介 | 建設業許可番号、代表と職人の顔 | 必須 |
| 性能・仕様 | 断熱性能、耐震等級、使用建材、保証内容 | 高 |
| アフターサービス・保証 | 点検の頻度、保証期間、緊急時の連絡先 | 高 |
| お客様の声 | 引き渡し後のインタビュー | 高 |
| イベント・見学会 | 完成見学会、相談会の告知と予約 | 高 |
| 採用情報 | 職人・現場監督の募集 | 中 |
「アフターサービス・保証」は、思っている以上に読まれます。建てて終わりではなく、その後何十年も付き合う相手を選んでいるからです。定期点検の時期、保証の範囲と期間、不具合時の連絡先を具体的に書いてください。
建設業許可番号は必ず掲載します。事業者としての信頼性を示す、検証可能な事実です。
地域名での検索に強くする
工務店は商圏が限られるため、「地域名+工務店」「地域名+注文住宅」「地域名+リフォーム」で見つかることが決定的に重要です。
- 施工事例に必ず市区町村名を入れる:これが最も効きます。事例が増えるほど地域の網が広がります
- 対応エリアのページを作る:市区町村を列挙し、エリアごとの施工事例へリンクする
- Googleビジネスプロフィールを整備する:地図検索で上位に出る。無料で効果が大きい
- 会社概要だけでなく各ページに地域名を自然に含める
1つ目が最重要です。事例を50件掲載し、それぞれに施工地を記載すれば、それだけで数十の市区町村名がサイト内に蓄積されます。施工事例の更新は、集客施策そのものです。
検索対策の詳細はSEO対策の具体的な施策と解決方法もあわせてご覧ください。
写真撮影と掲載許諾
施工事例が主役である以上、写真の質がそのままサイトの質になります。
撮影のポイント
- 引き渡し前に撮る:生活用品が入る前が最もきれいに撮れます
- 外観は時間帯を選ぶ:晴天の午前中、または夕暮れの照明を点けた状態
- 広角レンズが必要:室内はスマートフォンだと画角が足りません
- 水回りは必ず撮る:キッチン・洗面・浴室は関心が高い箇所です
- 施工中の写真も残す:構造や断熱材の写真は、性能の証明になります
最後の項目は差別化になります。完成写真はどの会社も載せていますが、基礎・構造・断熱施工の写真は、見えない部分の品質を語れる数少ない手段です。
掲載許諾は契約時に取る
引き渡し後に「サイトに載せてよいか」と聞くと、断られることがあります。工事請負契約の段階で、写真撮影と掲載についての取り決めを入れておいてください。
確認する項目です。
- 写真の掲載可否(外観のみ可、内観も可など段階を設ける)
- 施工地の表示範囲(市まで/町名まで)
- お客様の氏名の表示(イニシャル/「H様邸」など)
- 掲載期間と、削除依頼への対応
権利関係の考え方は契約・著作権・検収の実務でも解説しています。
費用と進め方
| 項目 | 目安 |
|---|---|
| 制作費用 | 80万〜250万円 |
| 制作期間 | 3〜5か月 |
| 費用が上振れする要因 | 施工事例の絞り込み機能、事例の初期登録件数、撮影日数 |
見積もりを取る際は、「施工事例を初期に何件登録するか」を条件として明示してください。30件と50件では作業量が大きく違います。ここが曖昧だと、各社の見積もりが比較できません。
見積もりの取り方は相見積もりの取り方と見積書の読み方を、工務店の実績がある制作会社は工務店・建設会社のホームページ制作に強いWeb制作会社から探せます。
よくある失敗
1|施工事例に施工エリアを書いていない
最大の機会損失です。工務店の集客は地域名での検索が中心なのに、事例に地名がなければ拾われません。公開済みの事例に市区町村名を追記するだけでも効果が出ます。今日からできる改善です。
2|事例の追加を制作会社に依頼する運用にしてしまう
1件5,000〜10,000円かかると、更新は必ず止まります。写真をアップして項目を埋めれば公開できる仕組みを最初に作ってください。この一点で、3年後のサイトの価値がまったく変わります。
3|「自然素材」「高性能」を言葉だけで語る
| 伝わらない | 伝わる |
|---|---|
| 高気密・高断熱の家 | UA値0.46、C値0.5以下(全棟気密測定を実施) |
| 地震に強い家 | 全棟耐震等級3。構造計算書を引き渡し時にお渡しします |
| 自然素材にこだわる | 無垢材(杉・ヒノキ)、漆喰、断熱材はセルロースファイバー |
| 安心のアフターサービス | 引き渡し後3か月・1年・2年・5年・10年に定期点検 |
数値と固有名詞は、それ自体が差別化です。言葉だけの表現は、どの工務店のサイトにも書かれています。
4|スマートフォンでの写真表示を確認していない
施工事例を見る人の大半はスマートフォンです。画像が重くて表示に時間がかかる、横スワイプができない、拡大できない——これだけで離脱します。公開前に必ず実機で全事例を確認してください。
5|見学会の情報が終了後も残っている
半年前のイベント告知がトップに出ていると、「活動していない会社」という印象を与えます。開催予定がないときは、その枠に施工事例や次回開催の案内を出す設計にしておいてください。
実際に公開されている工務店のサイトを見て決めたい場合は、制作者が分かっているものだけを集めた工務店・住宅・建築のウェブサイトデザインをご覧ください。
制作会社とスタッフの名前まで載せています。
よくある質問
Q. 施工事例は何件あればよいですか?
公開時点で最低20件、できれば30件です。少なすぎると実績への不安を与えます。ただし写真だけの事例を50件並べるより、情報の揃った事例が20件あるほうが効果的です。公開後は月2〜3件のペースで追加してください。
Q. お客様の声はどう集めればよいですか?
引き渡し後1〜3か月のタイミングが最適です。住み始めた実感があり、かつ満足度が高い時期だからです。「依頼前の悩み」「決め手」「住んでみての変化」の3問で十分な内容になります。
Q. 見学会の告知は効果がありますか?
大きな効果があります。工務店選びで最も強い接点は「実際の建物を見てもらうこと」です。サイトから直接予約できる導線を必ず用意してください。電話のみの受付では、営業時間外の申込みを取りこぼします。
Q. リフォームと新築、両方扱っています。分けるべきですか?
サイトは1つで構いませんが、導線は入口から明確に分けてください。検討している内容も予算感もまったく違うためです。トップページで「注文住宅をお考えの方」「リフォームをお考えの方」と分岐させ、それぞれ専用のページ群に進む構成が有効です。
まとめ
- 施工事例は写真ギャラリーではない。要望と工夫した点を書く
- 事例に施工エリアと価格帯を必ず入れる。地域集客の核になる
- 自社で事例を追加できる構成にする。都度依頼だと更新が止まる
- 価格は幅でよいので示し、含まれない費用を明記する
- 写真は引き渡し前にプロ撮影。施工中の写真も残す
- 掲載許諾は工事請負契約の段階で取り決める
工務店サイトは、公開時の完成度より更新の継続で差がつきます。事例を追加し続けられる仕組みを、設計段階で確保してください。

