WordPressサイトを多言語化するときは、誰に・何を伝えるかを決め、翻訳ページを公開後も更新できる方法を選びます。自動翻訳の導入だけでなく、訳文の確認、言語別URL、問い合わせ対応までを一緒に設計しましょう。
この記事では、制作を依頼する前に決めたい範囲と、公開前の確認項目を整理します。
対象言語と翻訳する範囲を先に決める
最初に、対象の顧客・国や地域・使用言語を整理します。英語を一律に優先するのではなく、商談や問い合わせの実績、提供できるサービス、返信できる言語から選びます。
日本語ページを更新したら、対応する翻訳版にも変更が必要か確認します。更新担当を確保できる範囲で、会社概要・主力サービス・問い合わせへの導線から始める方法があります。
| 段階 | 翻訳する範囲 | 公開前に決めること |
|---|---|---|
| 第1段階 | 会社概要など1ページ | 対象読者と次に進むリンク。日本語ページへ戻る箇所も案内する |
| 第2段階 | 会社概要・事業内容・問い合わせの3〜5ページ | サービス説明から問い合わせ・返信まで対象言語で対応できるか |
| 第3段階 | 主要ページ全体(10ページ程度) | 製品・事例・資料も含む訳文の整合性と確認担当 |
| 第4段階 | サイト全体とブログの継続翻訳 | 原文更新を検知し、訳文を修正する運用と予算 |
翻訳するURL、対応する翻訳先、更新担当、訳文の確認日を一覧にすると、公開後の更新漏れを追いやすくなります。対応先のないページは、無関係な翻訳ページへ結び付けないよう区別します。
翻訳方法とページの管理方法を分けて選ぶ
「機械で訳すか、人が訳すか」と「訳文をどこに保存・公開するか」は別の判断です。プラグインでも機械翻訳と人による修正を組み合わせられるものがあり、機能は製品・プランによって異なります。
| 方式 | 確認する点 | 向いている用途 |
|---|---|---|
| 閲覧時の自動翻訳 | 訳文を修正できるか、言語別URLがあるか、翻訳ページを検索対象にできるか | 既存ページを読む補助。重要な説明の誤訳時に対応できることが前提 |
| 翻訳ページを同じWordPressで管理 | 原文との対応付け、翻訳状態、テーマ・フォームとの互換性 | 言語間で構成をそろえ、更新をまとめて管理したい場合 |
| 言語別サイトとして管理 | 別々の更新・保守・問い合わせ体制が必要か | 地域ごとにサービスや掲載内容が大きく異なる場合 |
例えばGTranslateの公式プラグイン説明では、無料版と有料サービスで提供機能が分かれています。「自動翻訳だから訳文を直せない」「プラグインを入れれば検索に載る」と一律には判断せず、必要な機能を契約前に確認してください。
AI翻訳は下訳を作り、人が確認してから公開する
機械翻訳を使う場合も、商品名・数値・対応条件が原文どおりかを確認します。固有名詞は公式の外国語表記があればそれにそろえ、訳す表現と原表記を残す表現を用語集にまとめます。
専門性の高い説明は、対象言語と業務内容の両方を理解する人に確認を依頼しましょう。特に製造業では、公差・単位・対応範囲・保証条件を原文と照合します。関連する設計は製造業・BtoBサイトの設計も参考にしてください。

上の図は既存記事で紹介した翻訳処理のイメージです。ツールによる処理を使う場合も、本番データベースを直接一括で書き換える手順を、そのまま実行しないでください。バックアップと検証環境を用意し、翻訳対象の本文と、変更してはいけないURL・ブロック構造などを分けます。
まず少数ページの下書きで、訳文・HTML・WordPressブロック・リンク・表示を確認します。原文を保存して戻せる状態にし、確認を終えたページから公開します。入力する文章に非公開情報が含まれる場合は、利用する翻訳サービスのデータ取扱条件も確認してください。
言語別URLとhreflangを設計する
Googleは言語ごとに異なるURLを使う方法を推奨しています。多地域・多言語サイトの公式ガイドを確認し、管理体制に合わせて方式を選びます。
| 方式 | 例 | 管理上の検討点 |
|---|---|---|
| サブディレクトリ | example.com/en/ | 既存サイトと管理をまとめたい場合の候補 |
| サブドメイン | en.example.com | 言語別に構成やシステムを分けたい場合の候補 |
| 別ドメイン | example.co.uk | 国別の運営・ドメイン保守を行う体制が必要 |
サブディレクトリにしただけで、日本語と翻訳版が重複コンテンツになるわけではありません。言語選択リンクを設置し、閲覧者が希望する版へ移れるようにします。
対応するページ同士を指定する
hreflangは、同じ内容の言語版・地域版の関係を検索エンジンに知らせる指定です。HTMLで設定する場合は、各版のheadに自分自身と対応先を含む指定を置き、相互に参照できることを確認します。詳しくはGoogleの言語・地域別ページの指定方法を参照してください。
以下は架空のサービスページの例です。英語版・日本語版と、どちらにも該当しない利用者向けの言語選択ページがある想定です。実際の対応URLに置き換え、全ページに同じURLを貼らないでください。
<link rel="alternate" hreflang="en" href="https://example.com/en/service/">
<link rel="alternate" hreflang="ja" href="https://example.com/ja/service/">
<link rel="alternate" hreflang="x-default" href="https://example.com/service/">
x-defaultは特定の言語に合致しない利用者向けの代替先を示します。hreflang自体に閲覧者を自動転送する機能はありません。プラグインで出力している場合は、手動設定を重ねる前に生成済みの指定を確認します。
サーバーとCDNは対象地域での表示を確認して選ぶ
対象国にサーバーを置けば必ず速くなる、というものではありません。ページの重さやキャッシュ、ネットワークなども含めて確認します。レンタルサーバーの契約・管理と合わせ、サポート体制や保守費用も比較しましょう。
CloudflareなどのCDNを使う場合は、言語別のページや問い合わせ画面が正しく表示されるかも確認します。導入だけで速度改善を保証せず、対象地域からの表示時間を導入前後で比べます。
公開前は本文以外も確認する
| 対象 | 確認内容 |
|---|---|
| 画像内の文字・PDF | 翻訳が必要な図・カタログを洗い出す。原文のまま残す資料は言語を案内する |
| フォーム | 項目名、必須・エラー表示、送信完了画面、自動返信メール、担当者への通知を確認する |
| 数値・表記 | 価格の通貨、税・配送条件、単位、日付、住所、電話番号の国番号を対象読者に合わせる |
| フォント・表示 | 対象言語の文字が表示できるか、ボタンや表・見出しがスマートフォンで崩れないか確認する |
| リンクとURL | 言語切替先が対応ページか、翻訳版から原文へ意図せず戻らないか確認する |
| 問い合わせ対応 | 返信できる言語、担当者、対応時間を決め、利用者にも案内する |
返信を日本語に限る場合は、送信後だけでなくフォームの手前にも、対象言語でその条件を伝えます。外国語ページを公開しただけで問い合わせが増えるとは限らないため、閲覧数と問い合わせの両方を追います。
費用は翻訳・実装・運用を分けて見積もる
費用は言語数だけでなく、原文の量、専門性、図やPDFの加工、フォーム、既存テーマとの調整、翻訳後の確認範囲で変わります。プラグインや外部サービスの継続料金と、原文更新時の翻訳費も含めて比較してください。
| 見積もり項目 | 確認する内訳 |
|---|---|
| 翻訳・校正 | 対象文字数、専門用語の確認、修正回数、対象言語 |
| サイトへの実装 | ページ数、URLと言語切替、既存機能との調整 |
| 周辺コンテンツ | 画像・PDF・フォーム・自動返信メールの対応 |
| 保守・更新 | 継続料金、原文変更時の再翻訳、障害対応の範囲 |
対象URL一覧を渡し、翻訳・確認・実装・保守それぞれの対象と除外事項、税区分を見積書に明記してもらいましょう。ページ数だけの料金比較では、必要な作業が含まれているか判断できません。
依頼前に用意するものと公開後の運用
依頼時は、原文URL・対象言語・翻訳が必要な画像や資料・用語集・訳文の確認者・問い合わせ担当・希望する公開範囲をまとめます。制作側と、言語切替・hreflang・フォーム送信・スマートフォン表示の確認範囲も合意しておきます。
公開後は原文変更時に対応する翻訳版を確認し、担当者・確認日・未対応箇所を一覧に記録します。価格や提供条件が変わった場合は優先して修正し、未確認の古い条件を掲載し続けない運用にします。
言語別ページの閲覧や問い合わせを見て、翻訳範囲を広げるか判断します。計測環境はGA4・Search Consoleの初期設定を参考にしてください。
翻訳の確認を相談したい場合
当社ではカナダで活動しているWeb開発者・デザイナーと提携しており、翻訳後に英語に詳しい専門家によるチェックを依頼することも可能です。対象の分野・ページ数・希望範囲を添えてご相談ください。


