EmDash(エムダッシュ)は、Cloudflareが作ったオープンソースのCMSです。
ソフトウェア自体は無料で、公式サイトには「Cloudflareにデプロイ」のボタンが並んでいます。
では、Cloudflareの無料プランのままで、サイトとして使い物になるのでしょうか。
この記事では、実際に無料プランで1つサイトを立て、WordPressから記事を取り込み、どこで止まるかを測りました。
最終調査日:2026年10月23日
先に結論を書きます。
セットアップと記事の取り込みまでは無料で通りますが、記事が入って管理画面を触りだすと、CPU時間の上限で断続的に落ちます。
実用には月5ドルのWorkers有料プランが要る、というのが当サイトの結論です。
この記事で分かること
- 無料プランでできたこと・できなかったこと
- なぜ落ちるのか(CPU時間の上限と実測値)
- 有料プランが「条件」になっている機能
- 無料枠に収まったもの(データベース・ストレージ)
- 無料のつもりで始めると引っかかる落とし穴
- 費用の目安
結論:無料プランで「できること」「できないこと」
| やりたいこと | 無料プラン | 有料プラン(月5ドル〜) |
|---|---|---|
| サイトを立てる・初期設定 | できる | できる |
| WordPressから記事と画像を取り込む | できる(画像は1回失敗し、再試行で成功) | できる |
| 記事を書く・公開する | できるが、3回に1回ほど管理画面が落ちる | できる |
| 公開ページを安定して見せる | ときどき 503 や Error 1102 になる | できる |
| 隔離したプラグインを使う | できない(公式が有料プランを条件にしている) | できる |
| プラグインのカタログから導入する | できない | できる |
| 独自ドメインとSSL | できる | できる |
隔離プラグインの条件は公式のPlugin Sandboxに、CPU時間などの上限はCloudflareのWorkers Limitsに書かれています(2026年10月23日確認)。
測った環境
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| EmDash | 1.3.1(Cloudflare用のblogテンプレート) |
| Cloudflare | Workers Free プラン。データベースはD1、画像はR2、セッションはKV |
| ドメイン | 独自ドメインのサブドメイン(Cloudflareの無料ゾーン) |
| 入れた記事 | WordPress(SWELL)のデモサイトから投稿17本・固定ページ3本・画像18枚、ほかに本文のある記事1本 |
| 測った日 | 2026年10月23日。公開した当日の約6時間分 |
アクセスは当方の操作と、公開直後から来るボットのスキャンだけです。
読者がいる状態ではなく、「管理画面を触っているだけ」の負荷です。
無料プランで起きたこと
1. 管理画面と公開ページが、ときどき落ちる
記事を取り込んだあと、管理画面の取り込みページと公開記事を開くと、3回に1回ほど CloudflareのError 1102(Worker exceeded resource limits)か 503 が返ってきました。
再読み込みすると開くので、使えないわけではありません。
ただ、原因が画面に出ないので、知らないと故障に見えます。

2. 画像の取り込みが1回失敗した
WordPressから画像18枚を取り込む工程は、1回目に「No result received from media import」で止まりました。
裏では画像を取りに行くAPIが4回続けて503を返していました。
2回目は18枚すべて通り、本文の画像URLも17本で書き換わりました。
取り込みは同じファイルを二重に保存しない作りなので、再試行しても増えません。
3. CPU時間が上限の3倍から16倍だった
Cloudflareのダッシュボードで、Workerの「CPU時間」を見ると、中央値が約30ミリ秒、上位10%が95〜160ミリ秒でした。
無料プランの上限は、1リクエストあたり10ミリ秒です。
同じ画面には「CPU時間制限を超えました」というエラーが4回記録されていました。
| 指標 | 実測(当日の24時間) | 無料プランの上限 |
|---|---|---|
| CPU時間の中央値 | 約30ミリ秒 | 10ミリ秒 |
| CPU時間の上位10% | 95〜160ミリ秒 | 10ミリ秒 |
| メモリ | 約80MB | 128MB |
| CPU時間の超過によるエラー | 4回 | — |
| リクエスト数 | 約300 | 10万/日 |
10ミリ秒を少し超えただけで毎回落ちるわけではありません。
超え続けるリクエストが弾かれる仕組みなので、最初の数回は通り、あとから落ち始めます。
「セットアップまでは問題なく通った」のはこのためです。
有料プランが「条件」になっている機能
EmDashの売りである「プラグインを隔離して動かす」仕組みは、CloudflareのWorker Loaderという機能を使います。
公式ドキュメントは、これをWorkers有料プランの機能だと明記しています。
無料プランのままだと、隔離するタイプのプラグインは読み込まれず、公式カタログ(レジストリ)からの導入もできません。
サイトを作るコマンドでも、最初からそう案内されます。
npm create emdash@latest my-site
...
Sandboxed plugins are disabled. Uncomment worker_loaders in wrangler.jsonc
to enable them later on a Workers paid plan.つまり「無料で試せる」のは本体の編集と公開までで、プラグインで機能を足す使い方は最初から有料が前提です。
無料枠に収まったもの
一方で、データベースとストレージは無料枠に十分収まりました。
| サービス | 実測(当日の24時間) | 無料枠 |
|---|---|---|
| D1(データベース)の読み取り | 77,835行 | 500万行/日 |
| D1 の書き込み | 3,915行 | 10万行/日 |
| D1 のサイズ | 1.66MB(記事21本) | 5GB |
| KV(セッション)の読み書き | 読み64・書き1 | 読み10万・書き1,000/日 |
| R2(画像) | 18枚 | 10GB、操作100万回/月 |
記事が数百本でも、この部分で無料枠を超えることはまずありません。
足りないのはCPU時間だけです。
無料のつもりで始めると引っかかる落とし穴
R2は「申し込み」が要る
画像の置き場であるR2は、無料枠があっても、ダッシュボードで「R2サブスクリプションをアカウントに追加する」を押さないと使えません。
押すときに利用規約への同意と、支払い方法の登録を求められます。
ここを済ませないと、最初のデプロイが「バケットが無い」で止まります。

無料アカウントではEmDashのサイトは5つまで
EmDashは、予約公開やバックアップのために、毎分動く定期処理(Cron Trigger)をサイトごとに1つ使います。
無料プランのCron Triggerはアカウントあたり5つまでです。
この定期処理もCPU時間10ミリ秒の上限の中で動きます。
画像の変換は月5,000回まで
公式テンプレートは、Cloudflare Imagesの仕組みで画像を端末に合わせて変換します。
無料プランでは「固有の変換」が月5,000回までで、超えると新しい変換はエラー(9422)になります。
変換済みの画像は出続けるので、サイト全体が壊れるわけではありません。
パスキー以外のログインにはメール送信の設定が要る
最初の管理者はパスキーで登録します。
メールのリンクでログインする方法もありますが、送信元ドメインを検証したメール送信サービスの設定が必要です。
公開した直後からボットが来る
公開して数分で、.env や設定ファイルを探すスキャンが届きました。
全部404で済みましたが、無料プランの1日10万リクエストは、こうしたアクセスも数に入ります。
費用の目安
| 構成 | 月額 | できること |
|---|---|---|
| Cloudflare 無料プラン | 0円 | 試用。軽い公開サイト。プラグイン不可。ときどき落ちる |
| Cloudflare Workers 有料プラン | 5ドル(約750円) | 実用。隔離プラグインとカタログが使える。R2・D1は無料枠内なら追加0円 |
| Node.jsのサーバー(VPS) | 500〜1,500円 | Cloudflareに依存しない。保守は自分で行う |
| (比較)WordPressのレンタルサーバー | 1,000円前後 | テーマとプラグインがそのまま使える |
月5ドルは為替で変わります。
WordPressのレンタルサーバーと比べて、劇的に安くなるわけではありません。
有料プランにしたときにどれだけ安定するかは、当サイトではまだ測っていません。
無料プランの使いどころ
- EmDashの管理画面と編集の感触を試す
- WordPressからの取り込みで、自分のサイトがどう崩れるかを確かめる
- 1日に数十アクセスの、落ちても困らない個人の実験サイト
お客さんに見せるサイトや、仕事で使うサイトを無料プランに置くのは勧めません。
理由は、落ちる原因が画面に出ず、閲覧者には故障に見えるからです。
よくある質問
Q. EmDashは無料ですか
ソフトウェアはMITライセンスで無料です。
Cloudflareのアカウント・独自ドメイン・SSL証明書・転送量も無料です。
ただし、安定して動かすにはWorkers有料プラン(月5ドル)が要るというのが当サイトの実測です。
Q. 無料プランで落ちるのはEmDashの不具合ですか
不具合ではなく、Cloudflare側の上限です。
EmDashの管理画面は1リクエストで多くの処理をするので、10ミリ秒の枠に収まりません。
Q. Node.jsで動かせば無料ですか
EmDash自体は無料ですが、Node.jsを動かすサーバーの費用がかかります。
レンタルサーバーの多くはNode.jsの常駐に対応していないので、VPSが必要です。
Q. WordPressとどちらが安いですか
有料プランにすると月5ドルで、国内のレンタルサーバーと大きな差はありません。
機能面の違いは「WordPressとEmDashの違い」にまとめています。
まとめ
- 無料プランでも、セットアップとWordPressからの取り込みまでは通る
- 記事が入って管理画面を触りだすと、CPU時間10ミリ秒の上限で3回に1回ほど落ちる(実測の中央値は約30ミリ秒)
- 隔離プラグインとカタログは、公式が有料プランを条件にしている
- データベースとストレージは無料枠に収まる。足りないのはCPU時間だけ
- R2の申し込み、Cronは5つまで、画像変換は月5,000回、という落とし穴がある
- 実用には月5ドルの有料プランを見込んでおく
出典
- Cloudflare Workers Limits:CPU時間・リクエスト数・Cron Triggerの上限
- Cloudflare Workers Pricing:無料と有料の料金
- D1 Pricing:データベースの無料枠
- Workers KV Pricing:KVの無料枠
- R2 Pricing:ストレージの無料枠
- Cloudflare Images Pricing:画像変換の無料枠
- EmDash:Plugin Sandbox:隔離プラグインに有料プランが要る根拠
- EmDash:Deploy to Cloudflare:Cloudflareでの構成と画像変換の注意
Cloudflareの上限と料金は変わることがあります。
導入する前に、公式のページで最新の数字を確かめてください。



